
Sparticle は清水建設との共同研究「設計図面のデザインレビュープロセスにおけるマルチモーダルLLMの活用」の成果を、情報処理学会 第87回全国大会(2025年3月14日開催)で発表しました。マルチモーダルLLM(大規模言語モデル)と画像セグメンテーション技術を組み合わせて建築図面の審査業務の一部をAIで自動化するこの実証では、屋上部分の「パラペットの有無判別」タスクにおいて最大75%の正答率を達成し、建設分野におけるマルチモーダルAIの活用可能性を示しました。
本稿は、2025年6月27日付で発表したニュースリリース「Sparticle、清水建設とAIでの建設業務効率化・ナレッジ継承の実証実験について情報処理学会で成果発表」(PR Times 掲載)の要約版です。
発表の概要
発表が行われたのは、情報処理学会(IPSJ)が主催する国内最大規模の情報処理分野の学術会議「第87回全国大会」です。同大会は2025年3月に開催され、共同研究の成果は講演番号 4C-06「設計図面のデザインレビュープロセスにおけるマルチモーダルLLMの活用に関する共同研究」として報告されました。
発表は、Sparticle から堀江康太郎、清水建設から NOVAREイノベーションセンター AI共創グループ(生駒コンダクター・古川グループコンダクター)が担当しています。
研究の背景:図面審査の属人化と人材不足
建設業界では慢性的な人材不足が続いており、業務の効率化と属人化の解消が喫緊の課題となっています。今回の共同研究では、効率化が特に求められる設計部門の「図面審査(デザインレビュー)」業務に注目しました。
審査の題材として選んだのは矩計図(かなけかりず)です。矩計図は建物の断面を詳細に示す図面で、断熱や防水など、施工不具合に直結する重要な情報を多く含んでいます。これらの確認作業は熟練者の経験に依存しており、審査ノウハウの継承が難しい業務のひとつです。
実証のアプローチ:マルチモーダルLLM × 画像セグメンテーション × RAG

矩計図には、線や面による形状表現に加えて、補足する文字情報も含まれます。そこで両社は、画像とテキストを同時に扱えるマルチモーダルLLMを採用しました。マルチモーダルLLMの基礎が気になる方は、LLMと生成AIの違いの解説もあわせてご覧ください。
精度向上のために組み合わせたのが、次の2つの技術です。
- 画像セグメンテーション:図面を領域ごとに分割することで、入力画像の解像度の向上を試みました
- 画像ベースの検索拡張生成(RAG):類似する過去事例を検索し、few-shot プロンプトを自動生成することで、分類精度の向上を実現しました
その結果、限られた学習データでも審査項目の分類タスクで一定の成果を上げています。図面や帳票をAIで読み取る実務適用については、AI-OCR×製造業 導入ガイド(図面・検査表の自動読取)で詳しく解説しています。
成果:パラペット判別で最大75%の正答率

検証の結果、屋上部分における「パラペットの有無判別」タスクで最大75%の正答率を達成しました。モデルの識別能力の高さから、建築分野におけるマルチモーダルAIの活用可能性を実証できた一方で、実務での適用に向けた次なる課題も特定できています。
今後の展開
本研究を通じ、マルチモーダルLLMを中心としたAI技術の導入が、建設業における業務効率化・ナレッジ継承の手段となり得ることが示されました。今後は次の課題に取り組み、AIによる建設業務支援の本格展開を推進していく予定です。
- 学習用データのバリエーションの拡充
- 建設業固有の知識や用語のモデルへの組み込み
Sparticle および清水建設は、引き続き実務に根ざしたAI活用の可能性を追求し、業界全体のDX推進に貢献してまいります。
GBase における実務AIの取り組み
本研究で用いたマルチモーダルLLMやRAGといった技術は、AIナレッジエージェント GBase の開発にも活かされています。なかでも、社外に出せない図面・技術文書を扱う建設業界や製造業では、自社環境にAIを構築できる GBase OnPrem の利用が増えています。

GBase OnPrem は、社内ドキュメントを学習させたRAG検索・回答生成をオンプレミス環境で完結できる構成です。機密性の高い技術資料を扱う企業でも、データを外部送信せずにAI活用を進められます。
GBase OnPrem なら、図面・技術文書のAI活用をセキュリティを保ちながら実現できます
まとめ:本研究の要点
- 発表:情報処理学会 第87回全国大会(2025年3月14日開催、講演番号 4C-06)
- 題材:断熱・防水など不具合に直結する情報を含む「矩計図」の審査業務
- 手法:マルチモーダルLLM × 画像セグメンテーション × 画像ベースRAG(few-shot プロンプト生成)
- 成果:屋上「パラペットの有無判別」タスクで最大75%の正答率
- 今後:学習データの拡充と建設業固有知識の組み込みにより、AIによる建設業務支援の本格展開を推進
